2023/01/07 07:00

Labの挑戦をひも解く。


Tsukuba Place Lab(以下Lab)での「繋がり」から生まれた商品を集めたオープンラボ。その商品は一朝一夕で生まれたものではありません。コラボ相手との挑戦の歴史が詰まっています。どのように繋がりが生まれたのか?Labはどのように挑戦を応援してきたのか?そうして生まれた商品のこだわりとは?「ラボヒストリー」では、Labという場で挑戦してきた方へインタビューすることで、商品に込められた挑戦のストーリーをお伝えします!


#5の話し手は、​​大学院在学中から実験教室やサイエンスカフェの講師を務め、物理アクセサリーや実験教室を通して科学の楽しさを伝えるべく活動している現Labスタッフのゆーみるしー(青木優美)。日々、さまざまなイベントを開催し、たくさんの人たちと垣根を超えて交流しているゆーみるしーは、もともと人と話すのがとても苦手だったそうです。そんな彼女がなぜ、自分の「好きなこと」や「やりたい!」を追求できるようになったのか?日々生まれる疑問や好奇心に目を向け続ける彼女の原動力とは?Labに出会う前のゆーみるしーにもフォーカスを当て、今までの挑戦をひも解き、これからの挑戦をお聞きしました。


ー「現在、Labでどのような活動をしていますか?」


「 "楽しい!" という自分自身の気持ちを軸に、みんなの好奇心に寄り添い、興味を引き出したい」


「科学」を軸に、日常の疑問にフォーカスを当てた実験教室「やってみる研究室(通称みる研)」や、ジャンル問わずさまざまなコンテンツをいろんな人が持ち込んで自由にプレゼンする朝活イベントの「ゼロゲン」く科学に関する話題提供をしてコーヒーを飲む会「Labサイエンスカフェ」、そして「好奇心」をキーワードに、物理アクセサリーの販売や実験教室講師の相談受付、動画編集を行っているブランド「粒や」の商品を販売しています。


※粒やの「物理アクセサリー」と「実験教室」はオープンラボにも出品中!!



ーみる研はどんなイベント?


「 "絶対に成功する実験教室" はやりたくなかった」


2022年5月からスタートした「やってみる研究室」は、身近な疑問について実験を通して考え「仮説を立てる」「実験する」「発見を言葉にする」という研究のプロセスを体験することができるイベントです。

疑問を突き詰める子や知識欲が強い子が多いみる研では「だめ」や「やらないで」は言わないようにしていて実験中にプログラムとは別の「やりたいこと」ができた時は、あいだの休み時間で話を聞いてあげたり一緒に考えたりして個別に対応しています。


日常の身近なことを疑問に感じて、そこで生まれた新しい疑問を大事にして欲しい。


もともと私自身もグループワークが苦手で…。でも今は、ディスカッションが新しい発想を生むと知っているので、みんなでディスカッションしつつ、一人一人に向き合う時間を大切にし、その子の「やりたい!」を尊重しています。


絶対に成功する実験教室はやりたくなくて。失敗からも学べるし、失敗も知識だと思う。


                                              (みる研の様子)

ーみる研のルーツとは?


ルーツはゼロゲン!ゼロゲンで、予備実験なしで好きなことをその場でやってみるのがすごく楽しかった。みる研でもそれがやりたくて。なにか「やってみたい!」が生まれたときに、「じゃあやってみようよ!」ができる仕組みをつくりたかった。


ーゼロゲンはどんなイベント?


「 "身近な疑問" を大切に、みんなでつくるイベント」


毎週木曜日の7:30~8:30に開催しているゼロゲンは「誰もが先生、誰もが生徒」になれる、みんなで知識を交換するイベントです。ジャンル問わずさまざまなコンテンツをいろんな人が自由に持ち込んで自由に喋れるゼロゲンでは、毎週新しいことを知ることができます。


なので、なんにでも興味がある人や知識を得るのが好きな人が来てくれます。最初は私が先生で、自分の研究紹介や勉強したことを発表していましたが、当時のLabスタッフのみなさんから意見をもらい、後押しをしていただき、いろんな人が登壇してさまざまなジャンルを学べる場になっていきました。

                                             (ゼロゲンの様子)

ゼロゲンの詳しい成り立ちはこちら→note


「好きなことを語る」を切り口にすることでどんなジャンルにもフィットし「みんなでつくれるイベント」になったことでゼロゲンという枠からたくさんのイベントが発生しています。


好きなことをその場でやってみて、そこで生まれた疑問をみんなでシェアしたり、みんなが好きなことを楽しそうに喋ってくれるのが嬉しい。


0~8限までつくれるみんなのイベント。みんなが好きに使ってくれたら嬉しいな。


ーLabサイエンスカフェはどんなイベント?


「横のつながりが少ないつくばのまちで、科学系の人が繋がる場」


2022年からスタートした「Labサイエンスカフェ」は、Lab利用者さんの「やりたい!」から始まりました。月1~2回木曜日の夜にLabでみんなでお菓子を食べたりコーヒーを飲んだりしながら科学に関する話をする会です。

講演会のように静かに研究者の話を聞くというよりは、話題提供者や参加者とおしゃべりしながら進めます。ゼロゲンと似ていて「好きなことを語る場」です。


                                       (Labサイエンスカフェの様子)

ーゼロゲンとの違いは?


ゼロゲンはジャンルの仕切りがないんです。Labサイエンスカフェは「サイエンス」と銘打っているので、ゼロゲンよりは学術的で研究者寄りのテーマで進めています。研究者や科学に携わる人にとって「サイエンスカフェ」という枠組みは有名で、Labを知らない科学系の人が来やすくて入り込みやすいイベントだと思う。


私のバックグラウンドにおいて”学問”の存在が大きくて…。自分がLabに来たきっかけも研究室で孤立気味の時期があったから、同じように孤立しがちな院生とかがもっと来てくれるきっかけになって、Labがもっとカオスになったらいいな。


ー「Labと出会ったきっかけは?」


私が初めて来たのは2018年。修士2年の時です。私が通っていた総合研究大学院大学はひと学年10名もいなくて、大学内でも院生同士の交流が少なかった。どこかで横のつながりが欲しくて。ひょんなことからLabを知り、SNSをフォローしてしばらくは眺めてました笑

最初は作業をしにきて、初めて参加したイベントは「戦略的大学生活のススメvol.16~文系論文発表会~」。ここでLabスタッフと知り合ったり、素粒子に興味がある子を紹介されたりして、一気にLabとの交流が深まりました。後にも先にも、「素粒子に興味がある子」を紹介されたのはあれが初めて笑


                          (戦略的大学生活のススメvol.16~文系論文発表会~の様子)

ーその後、なぜスタッフに?


利用者としてLabに来ていた期間が長くて、スタッフになったのは2020年。場として好きだったのはもちろん、スタッフになったほうがより人をつなげやすいと考えたんだと思う。


本来、接客は苦手で、人と話すのも苦手。でも、Labなら大丈夫だった


ー「ゆーみるしーにとって、Labはどんな場所?」


こんな楽しい場所は他にないと思う。ずっと居れたのは ”あらゆる普通を受け入れる文化” が「挑戦を応援する場所」の土台にあったから。


いろんな人がいる、いろんな意見が出る場所だからこそみんなでイベントがつくれる。イベントをやる上でも、リラックスできて開放感がある。場の設計自体がそうなっているんだと思う。研究で行き詰まっていた私が、Labで自分らしく過ごしたことでいろんな挑戦をすることができたんです。挑戦を応援する場であり、「背中を押してくれる場所」だと感じています。


                      (2022年12/1のLab6周年イベント「6周年だよ!全員集合!」の様子)

ー「そんなLabがあったからこそ始まった”粒や”のルーツとは?」


「 "好き" を追求して叶えた夢」


2018年の9月に学術系のグッズイベントの「博物ふぇすてぃばる!」に行ったんです。元素記号のアクセサリーとか売られていて。でも、物理をモチーフにしたものは無かった。これはつくるしかない!2019年の博物ふぇすに出たい!と思い、グッズ製作に取り掛かりました。最初はポストカードや缶バッジ、マステをつくり、そのあとは2種類のイヤリングを製作。本当はネックレスがつくりたかったけど、金属なので金型をつくるのに10万かかると知り、諦めていました。

そんな折にLabでFriday Night Bridgeという投資家と起業家をつなげるピッチイベントをやっていることを知りました。


Lab代表の堀下さんに「個人で出てもいいですか?」と聞いたところ「いいよ!」と言っていただき、プレゼンしました。


投資家へのピッチは初めてで、方法も知らなかったので販売計画とかではなく「物理の魅力」やつくりたいネックレスのモチーフである「ファインマンダイアグラム (物理の反応式) 」の魅力をひたすら語りました。


                       (物理アクセサリー「粒や」ファインマンダイアグラムネックレス)


結果「おもしろいプレゼンだったから」とポケットマネーで5万、「経営計画や、投資家へのリターンを考えたら」という条件で10万を2人の投資家から出資していただき、最終的に15万円の支援をいただきました!それを初期費用に充て、ネックレス製作は成功!


その後「好奇心」がキーワードのブランド、”粒や”として本格的に活動を始め、2019年の2月からアクセサリー販売を開始しました。“粒や”のアクセサリーは、物理の知識がない人でも手に取りやすい、シンプルで美しい物理のデザインをモチーフにしています。


2019年5月からは個人での実験教室の運営依頼の受託も始め、こどもから大人まで「なんで?」という疑問を引き出すようなプログラムを実施しています。また、動画編集の依頼も受け付けていて、Labで自分の想いを伝えて夢を叶えた経験を元に「あなたの想いを伝える」表現を意識して編集を行っています。


全然物理に興味がなかった人にも手に取ってもらいたいという想いがあり、ネックレスをオープンラボに載せてもらうというのは私の想いが届く一つのきっかけになっています。


ー「好き」や「やりたい!」を追求するようになったのはいつから?


段階を踏みつつ、結構大人になってから!Labに出会ってからだと思います。


特に中学までは、自分の気持ちや好きなことを言葉にするのが苦手で。中学3年生のときに参加した海外派遣事業でオーストラリアへ行き、そこでの他校の生徒との交流がきっかけで「素直になる」「やりたいことを素直に言う」ができるようになった気がします。それから高校、大学では課外活動なんかも積極的にやってみたりして…。「自分らしくいられる場所」を探しに行っていたのかな。


そういう段階があってから「Lab」という自分らしく振る舞えて、やりたいことをやれる場所に出会いました。


         (2022年12/1(木)のLab6周年イベント「6周年だよ!全員集合!」でのみる研の様子)


ー「活動における原動力とは?」


好奇心が原動力!でも「わからないことを追求する」ということをずっとやってきたわけではないんです。小さい頃から好奇心旺盛ではあったけど、疑問を調べるほどではなかった。


疑問に思っていることを調べる初めてのきっかけというか、印象に残っている出来事は中学の授業で、サラダ油を固めてロウソクをつくる実験をしたときに「油ってサラサラしてるのになんで固まるんだろう?」と思って、先生に提出するリアクションペーパーにその疑問を書いたんです。


返ってきたシートには先生から「じゃあなんで固まるのか調べてみましょう!」とコメントが。それを見て、そっか!調べればいいのか!と。それがすごく心に残っていて、嬉しかったというか、楽しかったです。好奇心に対するアプローチがわかった瞬間だったのかもしれない。


それまで勉強って教科書を覚えることだと思っていて、好奇心は旺盛だけど今みたいにこんなに色々やる子ではなかったんですよ笑

今はその場の疑問とかを全部拾うし、本当に、「楽しい」「好き」を追求していて、別人みたい。そもそも私、挨拶できないような人見知りの子だったんです。だから、今人と喋る仕事をしているとか、外に講演に行って、100人の高校生相手に喋るとか本当に信じられない笑


ー「これからLabでどんなことをしていきたいですか?」


「自分が得意な "科学" を軸に人を繋げたい」


私の「やりたい」がいっぱいあるからこそ、そのたくさんある「好きなこと」に共感して集まってくれる人がいる。そういう人たちを繋げて、交流が少ないつくばの科学系の人たちのコミュニティづくりの一端を担えたらいいなと思ってます。やっぱり、Labは人を繋ぐことで価値が生まれる場所だから、自分と来てくれる人だけが繋がるのでは意味がなくて、来てくれた人同士を繋げたい。


きっかけは私のやりたいことや好きなことかもしれないけど、それをきっかけに繋がってくれたら嬉しいです。研究者や博士の学生にもっと来やすい場にして、応援したり、背中を押したい。


研究者もいろんな人と話すことでアイディアが生まれるし、きっとLabはそれが素でいけるような、新しい発想が普通に生まれる場所だと思う。

                                       (Labサイエンスカフェの様子)


ー「今後、コラボ商品とともにどんな挑戦をしていきたいですか?」


“粒や”の物理アクセサリーは、粒やのサイトに載せるだけではなくて、他のお店やスペースに置いてもらったり、物理と全然関連のないところに出ていってほしい!


何より、この「ファインマンダイアグラム」ネックレスはLabがあったからこそできたものだし、そういう「挑戦を届ける」「挑戦が出歩く」という意味でもこれをオープンラボに載せてもらえるのはすごい嬉しいです。


オープンラボに掲載している「実験教室」では、Labで培ったことを外に持ち出したい!


ゼロゲンと似ていて、好きなことを語れる場であり「一緒に考え、その人に合わせてやる」実験教室のイメージで、今までゼロゲンでやってきたことや、Labで培ったことの積み重ねを外に持ち出したいと考えています。


好奇心を追求する中でたくさんのきっかけに出会い、Labと出会い、自身とみんなの「好き」を尊重するイベントやコミュニティづくりをしているゆーみるしー。身近な疑問や発見を大事にする彼女の視点は、見落としがちな日々のワクワクにたくさんの人が気づくきっかけとなっています。ゆーみるしーの好奇心は尽きることなく、たくさんの人の「やりたい」を応援しながら彼女の挑戦は続きます。


株式会社しびっくぱわー 八木明日香

Tsukuba Place Lab

“みんなでつくる、みんなの場“というコンセプトのもと、2016年の着想から、クラウドファンディング、DIY、4日間に渡るオープニングイベント…とたくさんの方を巻き込み巻き込まれながら創業し、運営を続けてきました。創業から5年半で延べ17,000人以上もの方がご利用くださっています。「異なる価値観が出会う、アイデアを共有できる場。人と人とを繋ぎ、やりたいことを実現していくための場」を提供するため、年間350本以上、累計1,700本以上のイベントを企画運営し、エネルギー溢れる場を、まさに“みんなでつくって“育んでいます。 Labという場を通じて、より多くの人が挑戦できる社会を実現したい。そして挑戦を本気で応援し合える文化を醸成したいと考えています。Labはこれからもコラボレーションと実験を繰り返し、「あらゆる挑戦を応援する場」であり続けます。