2022/11/05 07:00


Labの挑戦をひも解く。

Tsukuba Place Lab(以下Lab)での「繋がり」から生まれた商品を集めたオープンラボ。その商品は一朝一夕で生まれたものではありません。コラボ相手との挑戦の歴史が詰まっています。どのように繋がりが生まれたのか?Labはどのように挑戦を応援してきたのか?そうして生まれた商品のこだわりとは?「ラボヒストリー」では、Labという場で挑戦してきた方へインタビューすることで、商品に込められた挑戦のストーリーをお伝えします!

株式会社ideal fashionが香りをつくり、unitXがパッケージデザインを担当した“つくば福来る風の香り”アロマスティックディフューザー。2022年3月に誕生し、11月1日にリキッド、パッケージともにリニューアル発売しました。そこでリニューアルを機に、ideal fashionの江本州陽さんへ香りについて、unitXの岡村未来さんとデザイナーの今井愛さんへパッケージデザインについて、それぞれインタビューさせていただきました!



前回の江本さんのインタビューに続き、#4ではデザインの面で“つくば福来る風の香り”に込められた挑戦をお届けします。話し手は、unitXの岡村未来さんデザイナーの今井愛さんです。Labをぎゅっと凝縮したような“つくば福来る風の香り”のパッケージ。どのようにunitXとLabのコラボが始まり、どのようにLabのコンセプトをデザインしたのか?岡村さん、今井さんとLab代表堀下との対談からひも解きました。


編入からの出会い、そして休学
ー今回のコラボは、岡村さんと堀下の出会いから始まっています。岡村さんはどのように堀下と出会ったのでしょうか?
岡村さん「2019年の4月、筑波大学に3年次編入してから参加した『戦略的大学生活のススメ』で初めてLabに来ました。編入生のコミュニティで『こんなイベントがあるらしいよ』と情報をいただいたんです。そこで堀下さんとたくさんお話しさせていただきました。」

堀下「あのとき本当にたくさん話したよね。」



岡村さん「堀下さんが初めて見た起業家だったんですよ。『どうやってLabをつくったんですか?』とかいろいろ聞いた覚えがあります。」

堀下「それからイベントにちょこちょこ来てくれるようになって。そのあと休学したよね?」

岡村さん「編入して半年後から、1年間休学しました。編入して3ヶ月後くらいには休学するって決めていたんです。自分で独立するための力をつけるために集中しようと思って。それは、Labに来てみんなの話を聞いて『みんな自分の得意なものがあってすごいな』と思ったことがきっかけだったんです。なにか胸を張って『できます』と言えることを身につけようと思ったので、1年間集中してやろうと思った。それで動画編集を始めました。」

堀下「それまでは動画をまったくやっていなかったんだよね?」

岡村さん「はい、そうです。それまで動画編集に関わったことはなかったです。」

堀下「突然動画を始めて、独立までしたのは本当にすごい。」

岡村さん「もともと情報を伝えることをしたくて、ブログとか写真とかいろいろ試してみたけれどしっくりこなくて。偶然知り合ったYouTuberの動画のお手伝いをしたのが動画を始めたきっかけでした。『動画って意外と面白いぞ』と思って、アニメーションを独学で学びました。ほぼ毎日、天気予報のアニメーションをつくってFacebookに載せていました。『動画をやっています』っていうのをアピールしたくて。」



堀下「Labに来てくれて、すごく興味を持ってくれてると思ったし、僕としても『なんかおもしろい子だな、一緒になにかできるといいな』と思っていた。けれど、気づいたら休学してつくばからいなくなっていて、1年くらいは会っていなかったんです。そのあと会ったのはTsukuba Startup Nightかな?」

岡村さん「そうですね。そのときにTSUKUBA CONNÉCTのアンバサダーに誘ってもらいました。2021年、4年生のときのことです。」

堀下「TSUKUBA CONNÉCTのアイキャッチやZoom背景などもunitXに依頼したよね。



unitXとLabがコラボするまで
ーunitXはいつ立ち上げたんですか?
岡村さん「TSUKUBA CONNÉCTのアンバサダーになったのと、ちょうど同じくらいの時期ですね。筑波クリエイティブ・キャンプ(TCC)に参加して、一緒に活動した芸術学専攻の子たちと立ち上げました。学生クリエイターを応援するようなプラットフォームをつくりたいとはずっと思っていて。仲間も見つかって『やってみよう』と一念発起しました。」

ー学生クリエイターを応援したいと思うようになったきっかけはなんですか?
岡村さん「私は学校で動画を勉強したことはないんですよね。それでもちゃんとお金をいただいて仕事をすることができた。一方、筑波大の芸術専門学群の子たちはめちゃくちゃスキルがあるし『独立したいと思っている』という話も聞くけれど、実際に独立できる人はすごく少ないと感じていて。私でもできたんだから、もっとスキルのある子たちはもっと活躍できるはず。そのサポートをしたいと思ったんです。」

堀下「それから僕もunitXにデザインを発注するようになりました。それは、未来の『学生のクリエイターを応援したい』という想いに共感したからです。『あらゆる挑戦を応援する』ことがLabのテーマであり、僕の人生のテーマなので。ディフューザーをつくるときにつくばにこだわってつくろうと決めたので、つくばにゆかりのあるデザイナーにパッケージデザインもお願いしようと思ったんです。他にもお付き合いのあるデザイン会社はあったけれど、若々しさとエネルギッシュさ、自分のルーツ、そういったものを全部ひっくるめて筑波大生とやれたらいいと思ったので、unitXにお願いすることに決めました。」



ー今回のパッケージデザインをお願いした今井さんはどのように選ばれたのですか?
岡村さん「学生クリエイターは公式LINEに登録しています。そのLINEの中で、筑波大生でパッケージデザインをしてくれる人を募集しました。何人か手が挙がった中で、今井さんのポートフォリオを拝見して、今井さんに決めました。」

ー今井さんはどうしてunitXに?
今井さん「現在、筑波大学の3年次で広くデザインを勉強しています。今は休学していろいろな団体や企業にコンタクトをとって勉強している途中です。その中のひとつとして、unitXに登録しました。」

ーデザインはどのようにつくったんですか?
今井さん「ディフューザーの香りのイメージが『福来みかんと芝を使った、エネルギッシュだけどリラックスできる香り』と聞き、そのイメージを表現しようと思いました。ちょうど卒業シーズンだったので『卒業したあとも新天地でつくばを思い出してほしい』という堀下さんの想いも意識しました。」

岡村さん「最初『そんな相反するイメージをどうデザインしたらいいんだろう』と悩みましたが、堀下さんの要望をそのまま今井さんに伝えて、いくつか案を出していただきました。」

堀下「要望を出してからは全部お任せでしたね(笑)」

今井さん「納期が1週間と短かったので、たくさんアウトプットしてイメージをどんどん近づけていこうという作戦に出たんです。シンプルで、つくばということが一瞬でわかって、Labの雰囲気も伝わるようなデザインに寄せていきました。」



岡村さん「今井さんはLabに来たことがなかったので『Labってこんなところ』という情報を今井さんにLINEで送っていました。人が集まって交流していて『あらゆる挑戦を応援する』というコンセプトで...といったことをお伝えしました。」 堀下「出していただいた案を見て『デザインはこっちがいいけど色を変えてほしい』などわがままを言った記憶があります(笑)色は、ロゴに合わせてオレンジと緑でお願いしました。」



今井さん「けれど、私自身がこのデザインに納得していなくて。ディフューザーを実際に買ってくださる方のことを考えたときに、デザインではなくて、この商品が完成するまでのストーリーに惹かれて買う方が多いんだろうな、と思ったんです。最初のデザインはそのストーリーを表現しきれていないと感じたのでリニューアルを提案させていただきました。」
堀下「僕も僕でちょうど箱を小さくしたいと考えていたんです。箱の大きさはディフューザーのスティックの長さで決まっていました。持ち運びや発送の観点から小さいほうが便利だと考え、スティックの長さを短くできないかと江本さんに相談していたんです。とはいえ最初のロットとリフィルも届いていて、今ある分を売っていかなきゃな、とリデザインに二の足を踏んでいたんですよ。そんなとき未来経由で『今井さんが箱のデザインをブラッシュアップしたいと言っている』と聞き『そんなことある?!』と驚きました(笑)」


「エネルギッシュでリラックスできる」Labのデザイン
今井さん「そして、ブラッシュアップしたデザインをいくつかつくりました。Lab感、フレッシュな感じ、チャレンジする感じを意識しました。」 堀下「“風の香り”なので流れる感じを出したく、丸くてごちゃっとしていたほうがLabっぽい、という観点から選んでいきました。」 Labのロゴも、風車をイメージした丸いデザインだ。 堀下「角がないっていうのは大事だと思う。ロゴの線も、まっすぐではなく削られているんです。まっすぐこだわるべきところと、柔和でこだわりを持たないところとのバランスが大事。人と接するにあたっては柔軟がいい、と思っています。なにかを受け止めるのに、丸いということはすごく大事かな。色は、エネルギッシュな太陽のオレンジと芝の草原のような緑のイメージ。元気とリラックスの象徴だと思っていて。」

堀下「Labの物件も多角形なことにはこだわった。四角は無駄がなく効率的。でも人と人との付き合いは余白が大事だと思う。さすがに丸い物件はなかったけれど、Labの出っぱっている壁などは愛おしい。」


堀下「ビジネスの観点として、この19坪しかない狭いスペースを運営するなら人は詰め込んだほうがいい。靴を脱がせるということは、スリッパが必要だし、脱いだ靴を置くスペースも必要だから、めちゃくちゃ無駄。でもそこまでしても靴を脱がせるということは当初から決めていたんです。さらに、寝転がれる芝をしいた。それは、そのほうがリラックスできて、滞在時間が延びると思ったから。滞在時間が延びるということは、回転率が落ちるので利益率は下がるけれども、Labでそれ以上の価値創造をしたいという想いが強かった。」

Labの「挑戦を生み出しリラックスできる」という場としてのデザインが、パッケージデザインに凝縮されている。


堀下「いただいたデザインの中でも、丸の中がグラデーションになっているものがいいなと思いました。」

今井さん「人と人とが交わる場所だと思ったので、それをグラデーションで表しました。中央の丸を目立たせたかったのでディフューザーの名前も控えめに。持ったときに手触りがよくて優しい気持ちになれるかと思い、クラフト紙にしました。さらに、デザインのポイントとして箔押しを入れました。」



デザイナーの挑戦が出歩く
岡村さん「最初、デザインの作者はシークレットだったんですよ。今井さんが『出さないでほしい』と。」
今井さん「デザインに納得していなかったこともあるし、デザインを公表するときに自分の名前を出す必要がないと思っていました。」 堀下「確かに、巷にあふれている製品のパッケージデザインには、わざわざデザイナーの名前は書いていないですよね。でも、僕らは『誰とどんな想いでつくったか』というストーリーを売りたかったので、パッケージにunitXとideal fashionの紹介を入れてほしい、とお願いした。なので今井さんの名前も出させてくれないかな、と思っていました。」 今井さん「中盤くらいに『これは利益のためにやっているのではないんだな』ということをやっと理解したんです。ストーリーを大事にしていることがわかったので『ここでは私の名前を出したい』と思えました。」

岡村さん「どんどん名前出してほしいです!」 堀下「お付き合いのある場にこのディフューザーを置いていただいていて。うれしいことに、どこも中身だけではなく箱も一緒に置いてくれているんですよ。リニューアルしたパッケージは小さくなって置きやすくなっている。今後も箱と一緒に置いてもらおうと思っています。」 岡村さん「今井さんのデザインが出回っていますね!」

岡村さんの挑戦、今井さんの挑戦、Labの挑戦の歯車が噛み合って完成したリニューアルパッケージ。今井さんが形にしてくれたこのパッケージは、Labが結晶化したもののように思います。オープンラボの想いである「Labの挑戦が出歩く」ことが、まさにこのディフューザーを通して形になっています。ぜひ“つくば福来る風の香り”をパッケージとともに置いていただき、Labの挑戦を香らせてください。 株式会社しびっくぱわー 青木優美

Tsukuba Place Lab

“みんなでつくる、みんなの場“というコンセプトのもと、2016年の着想から、クラウドファンディング、DIY、4日間に渡るオープニングイベント…とたくさんの方を巻き込み巻き込まれながら創業し、運営を続けてきました。創業から5年半で延べ17,000人以上もの方がご利用くださっています。「異なる価値観が出会う、アイデアを共有できる場。人と人とを繋ぎ、やりたいことを実現していくための場」を提供するため、年間350本以上、累計1,700本以上のイベントを企画運営し、エネルギー溢れる場を、まさに“みんなでつくって“育んでいます。 Labという場を通じて、より多くの人が挑戦できる社会を実現したい。そして挑戦を本気で応援し合える文化を醸成したいと考えています。Labはこれからもコラボレーションと実験を繰り返し、「あらゆる挑戦を応援する場」であり続けます。